1. ツムラの歴史
1893年(明治26年)津村順天堂として開業。当時は、婦人良薬「中将湯」(チュウジョウトウ)が主力商品。その後「中将湯」の原料の一部から「バスクリン」が開発されヒット商品となる。1976年薬価基準に収載され、1988年株式会社ツムラへ名称変更。現在は医療用医薬品を中心に売上高795億円、従業員数2,172名(平成20年3月末)の国内大手の漢方製剤メーカーである。
2. 漢方とは
<歴史>
○5〜6世紀頃に日本伝えられた古代中国に発する経験医学が起源
○その後1400年以上の歳月をかけて風土や気候、体質に合わせて発展を遂げたものが日本漢方であり17世紀頃、日本に紹介された西洋医学=「蘭方」に対して、それと区別するために「漢方」と名づけられたことが始まり。
→日本独自の医療文化であり、中国漢方と日本漢方は別物。
西洋医学を学んだ医師が漢方を取り扱うことが日本漢方における特徴
<漢方薬とは>
○複数の生薬の組み合わせ
生薬・・・植物、動物、鉱物などの天然産物から効能を見出したもの
ex. みかん→陳皮(チンピ) 胃腸を整える
しょうが→生姜(ショウキョ)、乾姜(カンキョ) 吐き気をとめる
牡蠣→牡蠣(ボレイ) 気を落ち着かせる
山椒、ゴマ、トリカブト、竜骨(化石)、サルノコシカケ等
○組み合わせの特徴
現在流通している漢方は、1800年前の「傷寒論」という本に記されている漢方の配分、効能にほぼ一致。
→決して一つの生薬では成り立たない=民間薬との違い(センブリ、どくだみ、アロ
エ等、民間で伝統的に活用されているもの)
→一つの生薬では副作用の発生などが考えられるため効能を活かし、反対作用を補う
ような組み合わせになっている
○漢方薬の考え方
漢方は「人が持っている病気を治す力を高めるもの」である(西洋医学では「病気の原因に対する処置」である)。漢方には三つの考え方があり、一つが欠けることで症状が表れるとされる。
「気」・・・生命を維持しようとする基本活力
「血」・・・血液の概念
「水」・・・体内の水液の総称
例えば「気」の異常であれば「気虚」(症状:だるさ)「気うつ」(症状:抑うつ状態)「気逆」(症状:冷えやのぼせ)に通じる。
○「証」について
漢方の考え方で一番大切なのは「中庸」の考え方。充実しすぎてもいけないし不足してもいけない。人間には体質が個々人で異なり、熱が不足する人もいれば熱が多い人もいる。同じ病気でも一律に熱を冷ますものを処方するのではなく、その人に合わせたオーダーメイドの治療をおこなうこと、これが「証」(ショウ)である。
<漢方薬に対する誤解>
○漢方薬には副作用がある
→全て口に入るものにはリスクある。体質的に合わない場合はあるが、副作用を打ち消すような処方がなされている。
○漢方の効用は長時間服用しないと表れない
→短時間でも効果はある。
○漢方は値段が高い
→医療用の漢方は健康保険が使える。一般の市販店で買う場合は高くつくことも。
○漢方を使う医者
→日経メディカルのアンケートによると医師の72.4%が「漢方を利用」と回答
また、「西洋医薬では限界ある」と感じる医師が62.8%となり、西洋医学と漢方
を併用する傾向あり
3.漢方薬の可能性
<西洋医療との併用>
病気が複雑化する中で、西洋医学だけでは限界を感じる医師が増加。2003年から80大学で医学生に漢方の授業が行われている。西洋医学では対応できない部分の併用が今後増加するであろう。
<性差>
男女の性差を意識し、特に女性医療の充実に漢方薬を活用(西洋医学では冷え性という病気はない)
<認知症>
認知証が持っている中核症状(記憶障害など)には西洋医学で良薬はあるものの、周辺症状(幻覚や不安など)には漢方が有効。→患者だけではなく、介護する家族や医療関係者にも助けになる。
4. ツムラのCSR
[漢方を通じて人々の健康と医療に貢献すること]
→良い漢方・生薬を安定供給すること
仕入れについては栽培や手入れなど契約農家との協働で品質を一定にしている。
(品質の変化が効能の変化になる)
→自然環境を守ることの大切さ
5. 所感
漢方という身近な存在に、深い歴史と考え方があることを改めて感じた。特にその人の体質、状況に合わせたオーダーメードの調合を行う「証」の考え方は個人重視、個人思考の現代において新たな可能性を秘めた考え方だと感じた。医療の現場においても漢方の活用が思った以上に進んでおり、西洋医学との併用によって新たな医療体制が構築されることも近い将来現実になると思われる。
以上
消費生活アドバイザー27期 松本 数馬