● ○○ 第114回あすか倶楽部 定例会 ●○○

第114回 9月19日(土)14:00?17:00
テーマ :特商法・割販法改正のポイント
講 師 :経済産業省消費者政策研究官 谷 みどり氏
場所:トヨタ自動車(株)池袋ビル7階702会議室




1.はじめに
  ▽日本経済5百兆円を支える需要の内、約3百兆円を占める個人消費は重要な役割を
    果たしている。
   そのような中で消費者に正しい情報が伝わらないと
    ・安いほうが勝つ(コストの大部分を占める材料費の安い海外へシフト)
    ・騙す勧誘や嘘の広告がうまい方が勝つ
   ⇒個人消費の多くが資源消費と悪質行為の報酬へ⇒経済の停滞+人材の劣化
▽消費者から全国の自治体の消費者センターに寄せられた相談は、国民生活センター  
   の全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録され、集計されている。        
   この消費者相談の件数は、2003 年度に100 万件を超え、2004 年度には200 万近
  くに達した。2005 年度は若干低下したが、20 世紀に比べれば、依然として高水準
  である。この急激な伸びの原因の一つとして悪質商法の増加が考えられる。

2.特定商取引法に基づく行政処分の例
  ▽これまで悪質商法が発生してから後追いで行政処分。健康に心配のあるお年寄りや若者や善良な社会人等がカモに。大学で法律等の高い知識を学んでいる若者が
   マルチにひっかかる現状に歯がゆい思い。
 ・リフォームの訪問販売(点検商法)に業務停止命令(12ヶ月)
    ・健康器具の訪問販売(催眠商法)に業務停止命令(12ヶ月)
    ・健康食品の連鎖販売取引(マルチ商法)に業務停止命令(6ヶ月)
    ・ビジネス教材の電話勧誘販売に業務停止命令(3ヶ月)
   
3.特定商取引と割賦販売法の改正(2008.6成立、2009.12施工)
  ▽昔から悪質商法(押し売り等)はあったが、違いは割賦販売により、損害額が
   格段に大きいこと。よって特定商取引と割賦販売をセットで法改定を行ったことが
   ミソ。
  ▽改正のポイント
   @規制の抜け穴の解消
    ・原則として全商品・全役務を扱う取引が規制対象(他の法令で消費者が保護
     されるものやクーリング・オフになじまないものは除外)
    ・割賦の定義の見直し(2ヶ月以上後の1〜2回払いも対象に)
   A訪問販売規制の強化
    ・契約を締結しない旨を表明した消費者に再勧誘禁止
    ・通常必要とされる量を著しく超える商品等を購入する契約を結んだ場合、
     契約後1年間は解除可能(過量販売規制)
   Bクレジット規制の強化
    ・個別クレジット事業者を登録制の対象に
    ・個別クレジット事業者に訪問販売等を行う加盟店の勧誘行為調査を義務付け
    ・個別クレジット事業者に書面交付等を義務付け(これまでは販売業者のみ) 
    ・個別クレジット事業者への行政監督
    ・虚偽説明や過量販売の場合の既払い金返還
    ・支払能力調査を義務付け、支払能力を超える与信契約の締結禁止
  Cインターネット取引など通信販売の規制の強化
    ・返品の可否・条件を明示していない場合は、8日間、送料負担で返品可能
    ・電子メール広告はあらかじめ承諾・請求がない限り送信禁止(オプトイン)
    ・クレジット事業者にカード情報保護のための措置をとることを義務付け
 
4.むすび
  ▽市場の規範は、国が立法し強制するものばかりではない。立法によらない規範も
   ある。また、強制によらず、経済社会の圧力で守る規範や、良心で守る規範もある。
   市場の規範の構築と遵守は、消費者、事業者を含む多様な市場関係者の参画によっ
   て実現する。

5.(参考情報)消費者庁設立に伴う変更点
  ▽特定商取引法の執行は消費者庁の権限に
   →特定商取引法の執行については経済産業局長が消費者庁長官の指揮監督を受ける
  ▽消費生活用製品安全法に基づく製品事故情報の報告・公表制度も消費者庁に移管

【質疑応答】
Q:指定役務がなくなった上での特定商取引の「特定」が示す意味は?
A:6つの商取引(通信販売、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引)である。
Q:「訪問販売の契約の締結はしません」と家の前に張り紙をしたら、契約を
  締結しない旨の意思表示になるか?
A: 張り紙が全く意味がないわけではないが 家に同居人がいる場合、誰の意思であるか
  不明瞭。
Q:「お断りします」とカードで意思を伝える方式は?
A:断ることに慣れていないお年寄りなどには有効な手段の一つではあるが
「何を」断るのかが不明瞭。(例:「このサプリはいりません」といわれたのなら
  別のサプリを勧誘してもよい。)  
Q:クレジットの支払いが完了していても、過量販売の場合は既払金が返還されるのか?
A:1年以内であれば返還される
Q:業務停止命令の期間の基準はあるのか?また、業務停止命令が下されても、社名を
  変えて同じような悪徳商法を続けているのでは?
A:業務停止命令についての内部基準はある。
  多くの場合、業務停止命令が出された時点で商売をたたむ。メディアに取り上げられ
ると類似の商売もダメージが大きく減少。経営者やマルチの上位勧誘者はリストに
  氏名が記載され再生が難しい。
Q:例えばテレビの修理を頼まれお客様の家に行ってテレビをチェックしたところ、修理  
  するより新しく購入した方が安くつくことがわかり、訪問先で新しいテレビを勧める。
  この場合も訪問販売になるのか?
A:新しいテレビを勧めた時点で訪問販売にあたる。
Q:行政が消費者保護のために関与できる範囲
A:公務員の数は限られている。その中で被害にあった消費者一人ひとりに賠償金を分配
  していくことは無理である。行政としてやれることは業務停止命令を出し、これ以上、
  悪質商法を発生させないことを徹底させていくことであると考える。

【所感】
 「数年前までは夢物語(指定商品・指定役務制の廃止、過量販売規制・・・etc)であった
  ことが実現できました」とおっしゃっていた谷先生の笑顔が印象的でした。
  また、賃料等でいろいろと言われている消費者庁ですが、取り合えずはやかんや
  急須まで経済産業省から持って移動された職員のお話等は、本当に現場の混乱ぶりが
  伺え、新聞報道等とは違う一面を垣間見る事ができたような気がします。
  一消費者としての立場と企業人としての立場では、この特商法・割販法の改正につい 
  ての思いは完全一致しない部分もありますが、消費者が安心して何でも買う事ができる市場が必要であるということは深く理解できました。

                              29期 丸田 美恵