● ○○ 第117回あすか倶楽部 定例会 ●○○

日 時:20010年1月16日(土)14:00?17:00
テーマ:儲かる農業
講 師:農業生産法人(有)トップリバー 代表取締役 嶋崎 秀樹氏
場 所:トヨタ自動車 池袋アムラックス 7F 706会議室




(講演内容)
1.はじめに
冒頭、講演に入る前に、嶋崎氏から価値のない訪問者を引き受けて
いる事情について(最近は価値のない訪問者を引き受けないようにされている)説明があった。

今、日本の農業は、変わろうとしている。しかし、日本の平等主義が、やる気のある者と、そうでない者の区分を許そうとせず、逆に、悪平等を生み出している。民主党政権が導入しようとしている農家個別補償も一つの例である。このまま、農家への過保護状態が続くと、日本の農業は、15年後程度で崩壊するものと考えている。
私が講演を引き受けるのは、話を聞いて貰って、聞いた人達が何か行動をしてくれることを期待しているからであり、消費生活アドバイザーという資格を持つ人達なら期待は大だと思ったからである。
家業としての農業と、企業としての農業とのバランスが必要だと考えているので、理解をお願いしたい。

2.会社概要
(有)トップリバー
H12年設立。設立以降、赤字はナシ。
売上高10.6億円(H21年度)。日本の農業法人(1万社)で、売上高10億円超の法人は1%以下。
業務は、農産物の生産、独立就農者育成(現在、20名)の他、農業関係者へのコンサルティング。
取扱品目はレタス、白菜、キャベツの3品目が主力。契約販売方式で得意先は50件程度。業務用60%、生協20%、スーパー10%。普通、農家は農協への委託販売方式を採用しているが、適正な価格で販売したいため、契約販売方式を採用している。

3.日本の農業の現状と課題
皆さんは、政府とマスメディアに操作されて、誤った知識を覚えていると思われる。食料自給率が41%程度と言われるが、これはカロリーベースであり、重量ベースなどでは違う値となる。野菜について重量ベースでみると自給率80%となる。米なら100%。カロリーベースだけの議論で、日本の農業は保護しなければという主張をしていることになり、視点が偏っている。

農業の現状は、ほとんどの農家がマーケットを見ていない。これが大問題である。生業としての農業、農家は、経営感覚に欠けている。
お客が欲しい物を供給するという視点がない。良い物を作れば売れるという時、農家が考える「良い物」とは、自分が考える良い物であり、お客が考える良い物ではない。お客が違えば良い物が変わることすら考えていない。例えば、スーパーがお客の場合、形が良い・低価格が良い物であり、加工業務がお客の場合、天候に左右されず安定供給され
ることが良い物である。
従って、課題は、農業に経営感覚を取り込むことである。

4.解決策
生業としての農業(農家)から、企業としての農業(組織農業)への転換が1つの解決策である。
今の家の考え方を変えさせることは困難だと思われるため、例えば、世代交代を促す政策を取り入れたりすることも検討の価値がある。
その上で、経営感覚を教え込む必要がある。しかし、この教育は今の農家ではできない。このため、生産と経営とを分離し、経営を行える人を連れてくることが解決策となる。つまり、コーディネータが必要。

5.今後の農業改革
必要な事項は以下の6点である。
・平等意識の改革と徹底
・世代交代のルール作り
・農業のピラミッド組織化
・組織農業の確立
・政策の分離(食料と農業の政策、別に農村への政策)
・人材育成

(所感)
「非農業者から農家を変えよう!」という嶋崎氏のスローガンに驚きを感じつつも、トップリバーにおける指導方針「素直な気持ち、感謝の気持ち、固定概念を捨てる」をお聞きすると、農業が特殊なものではなく、どこの会社でも言われることが通用する、普通の職業であることが良く理解できた。
お客である私達から、農家に対し、こうして欲しいと要望を伝えることが農業改革の一助になる、との嶋崎氏の言葉には、消費生活アドバイザーに対し、期待感を持たれているように感じました。